こんにちは。デスクワークラボ、吉井良平です。
個人で事業をされている方から、エクセルで顧客管理をする方法について問い合わせがありました。
最近はクラウド型顧客管理システムもあるので、いくつか見てみたのですが、ちょっと個人事業主には仕組みが大きすぎるな、というのが正直な印象です。
(2019年10月追記・・・個人事業主でも使いやすい、安価な顧客管理クラウドもいくつか出ています)
やっぱり個人事業のうちはエクセル主体の方がお金もかからず、使い勝手も良いだろうな、と思います。
(美容系などの大きな業界は、個人事業主用のパッケージシステムで良いものがあると思います)
とは言っても、エクセルは結構アバウトなところがあるソフトなので、そのままの状態で顧客管理をすると、使いにくい表になったり、入力ミスや漏れが多くなってしまうのも事実です。
ということで、今回から2回にわたって、エクセルで顧客管理をする場合の作り方や、注意点を書いていきます。
今回は、顧客マスターの作り方についてです。
やっぱりミスなく漏れなく作るためには、マクロを使ったり、ちょっとややこしい設定をした方が良いので、「難しい!」と思われるかもしれませんが、一つ一つ落ち着いてやってみてくださいね。
(今回の手順で作ったファイルは、後で無料ダウンロードできます)
なお、少しお金を出しても良いので、顧客別の販売回数、実績まで管理したい場合は、運営者(吉井)までご連絡下さい。
いろいろ個別の対応をしていると最低でも3万円はかかるかな、という感じですが、売上上位の人が分かったり、来店頻度が分かったりするので、金額分の元は充分に取れるはずです。
顧客マスターを作る
まず、顧客(クライアント)のマスター、データベースを作ります。
(いきなり横文字が出てきて恐縮ですが、どちらも良く使う言葉なので覚えておいて損はありません。)
マスターとは、「情報の元になるデータ」のことです。
将来的に、顧客にお礼状を出したり、新サービスの案内を出したりすることが考えられますよね。そんなときに、情報を引っ張ってくる元になるデータを作りましょう。
マスターを作る際には、「データベース」という形で作ります。
データベースとは、「一定の法則で並んだデータ」のことです。
一定の法則とは何かというと、簡単にいうと「縦方向に、隙間なく」データが並んでいると考えてください。
重要なので、もう一度書きます。「縦方向に、隙間なく」です。
横方向はダメ
下の図を見てください。

都道府県の人口と面積が、縦方向に隙間なく並んでいますよね。
これはデータベースと言えます。
では、こちらの図はどうでしょう?

先ほどと同じデータですが、横方向に並んでいますよね。
人間の目で見ると同じじゃないかと思いますが、横方向ではダメなんです。
横方向ではダメな決定的な理由が、2つほどあります。
それでも横方向で作りたい人は作ってもらってもそりゃいいんですけど、できるだけ縦方向でデータを並べる習慣をつけておいてくださいね。
① フィルターが使えない
エクセルには「フィルター」という機能があって、特定の値だけを表示させることができます。
(四国地方だけを、フィルターを使って表示させた例です)

上側の▼ボタンがフィルターで、データタブ → フィルター で設定します。
特定の値だけを表示させる便利な機能ですが、横方向になっている(=データベースになっていない)形だと、この機能を使うことができません。
② 並べ替えができない
データベースになっていると、項目ごとの並べ替えが簡単にできます。
先ほどの表を、人口の多い順に並べ替えてみました。

横方向にデータを作ってしまうと、この並べ替え機能が使えません。
顧客マスターであれば、住所ごとに並べ替えたり、特定の地域に住んでいる人だけを表示させたり、男女別に並べ替えたり、いろいろやりたいことがあるはずです。
横方向にデータを作ってしまうと、これらの機能が使えなくなってしまうのです。
隙間があってもダメ
たまに、見やすいようにということだと思うのですが、表の中にスキマ(空白行、空白列)を入れている表を見ることがあります。

これも、横書きと同様に「フィルターが使えない」「並べ替えが上手くいかない」という理由でNGです。
もし、空白行や空白列を作っている方がいらっしゃったら、セルの幅や高さを調整して見栄えを調整するようにしてください。
スキマを作ってしまうと、エクセルの機能を活かすことができないので、もったいないですよ。
「縦方向に」「スキマなく」作っておくと、集計に便利な「ピボットテーブル」という機能も使えます。
データベースの各部分の名称
この辺は特に覚えなくても大丈夫ですが、知っておくと得する知識なので、データベースで使う用語を書いておきますね。
一件一件のデータ(赤枠で囲っている部分)を、レコードといいます。レコード=記録です。
緑枠で囲った縦の部分を、フィールドといいます。人口なら人口フィールド、面積なら面積フィールドです。
青枠で囲った部分は、フィールドの名前です。
おそらく、この辺の名称は変わることがないので、一生役立つ知識です。
実際に顧客マスターを作ってみる
だいぶ前置きが長くなってしまいました^^
ここからは、実際に顧客マスターを作っていきます。
顧客マスターで管理する項目は、あなたの仕事で必要な項目です。
一般的には、名前、職業、郵便番号、住所、電話番号、FAX番号、携帯番号、メールアドレス、ぐらいですかね?
B to Bの場合は、役職なども入ってくるでしょう。
生年月日や男女別、既婚未婚などが必要な場合は、それも入れておいてください。
この辺の項目は、それぞれのお仕事で違うと思うので、ご自分の仕事で必要な項目を入力してみてください。

タイトルは、クライアント一覧とか、顧客管理表とか、お客様一覧とか、ご自分の分かりやすい名前で構いません。(なくても構いません)
上記の例では、最初にスペースがあった方が見やすいと思うので、A列を何も入力しない欄にしていますが、これもA列から入力しはじめても構いません。
(注:エクセルの「テーブル」機能を使うと、タイトル行なしのデータベースができます。テーブル機能を使うというのも一つの手です)
ただ、最初にID欄を作っておいてください。
登録した順番が分かるというのと、もし同姓同名の方が現れた時に区別がつきやすくなります。
見栄えを整える
とりあえず1件入力してみて、それで大体の見栄えを整えていきましょう。
この辺はお好みですが、下記の例ではセルの幅を増やしたり減らしたりして、フィールド名の部分には色をつけて分かりやすくしました。
あとで項目(フィールド)を追加したりするかもしれないので、見栄えに関しては、最初はあまり凝らなくて良いと思います。

ウインドウ枠を固定する
データが増えていっても大丈夫なように、ウインドウ枠を固定しておきます。
こうしておくと、データが増えていっても、常にタイトル行(フィールド名)が表示されるようになります。

とりあえず、顧客マスターシートの設定はこのぐらいです。
入力用シートを作ろう
ここからの設定は、ちょっと難しいので、面倒くさい人はしなくても大丈夫です。
が、逆に面倒くさがりの人の方がやった方が良い設定です。
先ほどの顧客マスターに、直接お客さんの情報を入力していっても良いのですが、やっぱり横方向だと入力しづらいですよね。
「入力しづらい→メンテナンスしなくなる」ということにも、なりかねません。
あと、せっかくなので見込み客の管理もできればやっていきたいところです。(最近の言葉でいうと、リードというヤツです)
なので、入力用の別シートを作って、顧客マスターとリード管理リストに転記をするようにしてみましょう。
新規登録用のシートを追加する
新しくシートを追加して、「新規登録」シートを作ります。

このシートに、顧客マスターの項目を、入力しやすいように並べましょう。
入力しやすいように、行の高さや列の幅も調整してください。入力位置を迷わないように、色付けもします。
入力するセル以外をロックする方法もありますが、個人事業主の場合はそこまでしなくても、という気がしますので、そこまではしません。

後でちょっとしたマクロを追加して、ここに入力したものを顧客マスターに追加するようにします。
入力設定をする
郵便番号、電話番号など、半角英数でしか入力しない欄に関しては、セルに入力規則をつけておきましょう。
そうすると入力も楽ですし、全角と半角が入り乱れた顧客マスターにならなくてすみます。

見込み客管理シートを作る
ホームページ、ブログ、チラシなどからの問い合わせが、必ず顧客になるとは限りませんよね。
問い合わせ→見積もり→商談→成約など、あなたなりの営業プロセスがあるはずです。
この営業プロセスを管理できるシートも作ります。

フィールド名には営業プロセスを入力していきます。
完了したら日付を入力していけば、このシートでTODOが管理できるようにしていきます。
顧客マスター、見込み客管理シートに追加するマクロを付け加える
マクロを使ったことが無い方は、ここからがちょっと難しいかもしれません。
まぁでも、きちんと顧客管理をすればお金になるので、頑張ってやってみましょう。
出来なかったらご依頼をいただければ、それなりのものを作ります。
マクロを登録できるようにする
マクロを登録するためには、エクセルに開発タブを出す必要があります。
下記の記事を開いていただいて、①開発タブを表示させる ②標準モジュールを表示させるところまでやってみてください。
「はじめての・・・エクセルマクロ! ちょっと下ネタ交じりにご紹介!」
(だいぶ前に書いた記事なので、ちょっと恥ずかしいですが)
標準モジュールが出たら、モジュールに下記のコード(プログラム)をコピペで貼り付けてください。
コードは初めての人にも分かりやすいように、長めに書いています。
Sub 新規登録() ' Dim WS1 As Object Dim WS2 As Object Dim WS3 As Object Dim LCRN As Integer Dim N1 As Long Dim MyName As String Set WS1 = Worksheets("新規登録") Set WS2 = Worksheets("顧客マスター") Set WS3 = Worksheets("見込み客管理") WS1.Select 'C4の値を、変数に格納 MyName = Cells(4, 3) 'C4~11の値を、コピー Range("C4:C11").Select Selection.Copy WS2.Select 'データを追加する行を取得 N1 = ActiveSheet.Rows.Count LCRN = Cells(N1, 2).End(xlUp).Row + 1 'IDを1個追加 Cells(LCRN, 2) = Cells(LCRN - 1, 2) + 1 Cells(LCRN, 3).Select '行列を変換して、値のみ貼り付け Selection.PasteSpecial Paste:=xlPasteValues, Operation:=xlNone, SkipBlanks:= _ False, Transpose:=True WS3.Select 'データを追加する行を取得 LCRN = Cells(N1, 2).End(xlUp).Row + 1 'IDを1個追加 Cells(LCRN, 2) = Cells(LCRN - 1, 2) + 1 '名前と日付を登録 Cells(LCRN, 3) = MyName Cells(LCRN, 4) = Date '新規登録シートの値をクリア WS1.Range("C4:C11").ClearContents End Sub
もし入力項目が多い場合は、新規登録シートの入力欄の数に応じて、コピー元の範囲(21行目)を変更してください。
(Range(“C4:C11”)の部分はC4~C11までという意味なので、ここをC12とか13とか、数を増やせば大丈夫です)
マクロをボタンに追加しよう
マクロを簡単に実行するために、ボタンにマクロを登録しましょう。
新規登録シートの適当な位置に、テキストボックスでも何でも良いので、図形を作ります。
作った図形の上で右クリックして、マクロの登録をクリックします。

マクロ名「新規登録」を選択して、OKを押してください。

お疲れ様でした。
これで、顧客管理をするエクセルファイルが出来上がりました!
今回作ったファイルの動画
一から作るのは大変なので、今回作ったファイルはダウンロードできます。
下記のフォームにお名前とメールアドレスを入力して、ダウンロードボタンを押していただくと、返信メールにエクセルファイルがダウンロードできるURLが書いてあります。
(取得した個人情報については、個人情報保護法に則って、適切に対応します。)
また、弊社ではシステム開発も行っておりますので、
ダウンロードしたものでは不十分、カスタマイズして欲しいということであれば
お問合せフォームからお問合せ下さい。
弊社のシステム開発についてお知りになりたい方は、
下記より説明ページへ飛べます。