こんにちは、広島県東広島市のITコーディネータ、吉井良平です。
商工会議所からの派遣等でIT関係のサポートをしたり、地元の中小企業の経営者と話をしていると、「地方の中小企業は、まだまだIT化について躊躇している、まだ避けている会社が多いな」ということを痛切に感じます。
世の中の進歩は待ったなしで、IT化の流れも早くなることはあっても止まりません。
そんな中で「会社の業務をIT化していくことをためらう原因は何だろう?」と考えてみると、
- ITとは何かが良く分からない
- IT化をするメリットが良く分からない
- ITに関する苦手意識がある
ということがあるのかな、と思います。
なので、今回は「ITとは何ぞや」「IT化するメリットは何ぞや」という点を、あまり難しい言葉は使わずに、詳しく紹介していこうと思います。
そもそもITとは?
「生産性向上のために、IT化をしよう!」というような宣伝があったり、国や自治体の政策でも企業のIT化促進の補助金があったりします。(IT導入補助金など)
でもそもそも「IT」というのはどういう意味でしょう??
(ITは「アイティー」と読みます。イットではありません^^)
ITは、「Information Technology(インフォメーションテクノロジー)」の頭文字をとって、ITと呼ばれています。
Information(情報)Technology(技術)ということで、日本語にそのまま訳すと「情報に関する技術」です。
これだと、まだ何のことやら良く分からないので、「情報」と「技術」について、もっと詳しく考えていきましょう。
※ICTという言葉もあります。ICTは、「Information and Communication Technology」 の略で、コミュニケーションを重要視した言葉です。
仕事における「情報」とは?
経営の四要素
「経営の四要素」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?
「四つの経営資源」とも言われて、「ヒト、モノ、カネ、情報」のことを指します。
ヒト
会社を運営しているのはヒトですよね。
経営者、従業員、取引先の担当者等々、会社を成り立たせるためには、まずはヒトが必要です。
ヒトがやる気にあふれた会社であれば、業績も上がっていくでしょう。
ということで、ヒトが経営に重要な要素である、ということはすぐ分かりますよね。
モノ
会社がお金を得るために、モノを販売しています。(サービス業の場合は、サービスを販売)
モノ(商品)の良しあしによって、会社の業績が大きく変わっていきますよね。
製造業であれば、生産設備というモノも重要です。
運送業でしたら車両というモノ、土木関係であれば重機などのモノ、いろんなモノによって、経営が変わってきます。
ということで、モノも経営の重要な要素です。
カネ
会社を維持していくためには、お金が必要です。
従業員に支払う給料、仕入れ先に支払う代金、販売先からいただく売上金、設備投資にかかるお金、等々、経営にはお金が密接に関わってきます。
カネが経営に重要、ということも、ほぼ当たり前のことです。
情報
さて、最後の要素、情報です。
情報が経営に重要というのも、なんとなく分かりますが、どのように重要なのかが、ちょっと分かりにくいですよね。
「今、アメリカでこんなことが流行っているから、日本でも流行るに違いない」という情報を得て、先行投資をしていく、というようなことでしょうか?
「こういう物質は将来的に使うことが禁止されるので、何か違う材料を探そう」ということで、新しい製造方法を開発していくことでしょうか?
確かに、このような世の中の動きに関する新しい情報は重要です。
でも、情報通じゃなくても、地道に会社を経営していくことはできます。「外部の新しい情報」という意味で「情報」という言葉を理解すると、全ての会社には当てはまりません。
「なぜ情報が経営にとって重要なのか」という問いに対する答えは、「情報によって仕事の質に大きく違いが出てくるから」だと、私は考えています。
情報によって仕事の成果が変わる
情報の重要性を考えてみるために、まず演習をやってみましょう。
紙と鉛筆(もちろんボールペンでもOKです)を用意してください。
では、始めます!
演習:指示に従って絵を描いてください
- 横に線を1本ひいてください
- △を描いてください
- 大きな○を描いてください
- 小さな○を2つ描いて、塗りつぶしてください
できましたか???
こんな絵ができましたでしょうか?
これは、コミュニケーションに関するセミナーで習った演習ですが、私の場合、こんなような絵になりました。
皆さんは、どんな絵ができましたか^^
正解はこんな絵です
「正解」は、顔のマークを描いてもらおう、ということでした。
カンの良い人であれば、途中から「これは顔かな?」と気づいたかもしれません。
「最初の指示が間違ってる!」とイラっとする方もいるかもしれませんね。
指示が間違っているのか?
「横に線を1本ひく」「△を描く」「大きな○を描く」「小さな○を二つ描いて塗りつぶす」という、指示の情報は間違いではありません。
顔の絵を描くときの順番も、正しい書き順はありませんよね。
でも、出てきた結果は、人によって全然違うものになっているはずです。
「情報によって、結果が全く違ってくる」のです。
仕事における情報とは?
この演習はちょっと極端ですが、仕事でも曖昧な情報に基づいて仕事をして、違うものが出来上がってしまうことがあります。
新入社員や異動したての頃には、「指示通りやったのに、やり直しを命じられた」ということが、結構ありますよね。
指示の背景にある暗黙の情報が共有されていないと、思った通りの結果が得られません。
情報によって仕事の成果が違ってくるため、仕事にとって情報がとても大事なのです。
情報に関する「技術」
「情報の質によって、仕事の成果が変わってくる」ということであれば、「情報の質を上げれば、結果的に仕事の成果も上がる」ということですよね。
情報の質を上げるためには、「情報に関する技術(=IT)」を使っていきます。どんな技術があるのかを、考えていきましょう。
※「技術」という言葉は、「テクニック」という意味と、「テクノロジー」という意味の両方があります。情報を伝えるためのテクニックは、コミュニケーション術等のアナログな方法があり、テクニックもとても重要です。
ITという言葉で表す技術は、デジタル化されたテクノロジーの意味合いでの技術です。
ITの3つの機能
情報に関する技術には、たくさんの種類がありますが、ざっくり大まかに分けると3つの機能に分類できます。
情報を伝える技術
情報をデジタル化することによって、「瞬時に」「別の場所へ」「複数人へ」情報を伝えることができます。
「伝言ゲーム」をやったことがある人は多いと思いますが、情報を正確に人に伝えるのは大変です。5人ぐらいになると、ほぼ100%の割合で何かの情報が抜け落ちていたり、内容が変わっていたりします。
昔は連絡網を作って電話連絡をしていたものが、今はLINEグループで送信するだけで終わり、になっていますよね。
(LINEを見てない、とか、元々あったコミュニケーションが失われる、といった側面もありますが)
ホームページやブログなどで、自分の会社の情報を発信することも、最近では普通になってきています。
情報を「早く」「正確に」伝えることが、仕事の成果につながります。
情報を蓄積する技術
仕事をしていると、いろんな情報が飛び交います。
「○月○日に、○○株式会社にAという商品を何個、いくらで販売した」
「○○さんは、○月○日に来店して、Bという商品を購入した」
「○月○日に、Cという商品を出荷して、送り状番号は×××です」
等々、膨大な量の情報が仕事に関わっています。
昔は、これらの情報を伝票の形にして残しておいて、後で調べる時は紙をペラペラとめくって探す・・・とするしかなかったのですが、今ではデータの形で蓄積しておいて、一瞬で検索できるようになっています。
何か調べものをする際も、昔は図書館に行って文献をあたって・・・としていたものが、インターネトに蓄積されたデータを瞬時に検索して探すことができますよね。
仕事において「探す」という時間は、全く付加価値のない時間です。
データを蓄積して、瞬時に探すことができるようにすることで、仕事の中のムダな時間を無くすことができますし、蓄積した情報を加工・分析することで、新たな付加価値を生むこともできます。
情報を加工する技術
仕事で利用する情報(売上情報、顧客情報、受注情報など)を加工することで、新しい価値を生むことができます。
製造業では、受注情報や納期情報から、必要材料を計算して材料発注を手配したり、生産着手日を決めることができます。材料価格や生産工数の情報から、製造原価の算出もできます。
小売やサービス業でも、売上情報を集計してグラフを作れば、売上傾向の分析ができます。売上情報と顧客情報を組み合わせて、もっと細かい分析(どこの地域のお客さんが多いか、優良顧客は誰か等々)をすることもできます。
情報を集計し、分析するといった作業は、パソコンを使わなくてもできます。小学校や中学校の授業で、手でグラフを書いたりしましたよね。
でもこういった作業は、人間よりもパソコンの方が断然に優れています。
例えば、仕事で10km離れた場所に行くのに、走って行こうとは思いませんよね。
車という、文明の利器を使います。
100kgのものを持ち上げるのに、数人で協力して持ち上げるのも大変です。クレーンなどの機械があれば、機械を使った方が良いですよね。
それと同じで、情報を集計・加工するためには、ITというテクノロジーを使うと楽だし、早いです。
「集計・加工」といった作業は、「間違えないように」気を使ったり、「他の情報に惑わされないように」集中したりと、結構精神的に疲れる作業でもあります。
こうした疲れを防止するためにも、ITを活用した方が良いです。
まとめ
少し長くなりましたが、「ITとは?」「ITを使うメリットとは?」ということについて、書いてみました。
まとめると、
- ITとは、「情報に関する技術」のことです。
- 情報によって、仕事の成果が変わります。
- 情報の質を上げると、仕事の質を向上させることができます。
- 情報の質を上げるための技術(テクノロジー)が、ITです。
- ITには、情報を「伝える技術」「蓄積する技術」「加工する技術」があります。
- 「情報を早く、正確に伝える」「情報を蓄積し、探す手間を減らす」「情報を加工し、新しい価値を生む」ことが、ITを利用するメリットです。
ITとは何か、ITを使うメリットが、だいたいつかめましたでしょうか?
では、次はITをどうやって取り入れるか、その方法を見ていきましょう!