中小企業のための初めての簡単データ分析

こんにちは、デスクワークラボの吉井良平です。

最近、iPadを使ったレジを飲食店に導入するお手伝いをしまして、管理画面で簡単なデータ分析ができるようになっていました。

販売データをCSVでダウンロードできるようにもなっていて、いろいろ分析できそうだな、と思いましたが、実際にこのデータを使ってる方は少ないんじゃないか、とも思いました。

「データ分析 入門」とかのキーワードで検索してみると、データ分析を専門に行っている人向けの記事は出てくるのですが、一般の人向けの記事が少ないようなので、私も簡単なデータ分析の記事を書いてみることにします。

  • データ分析の専門家になろうとは思っていない
  • とりあえずあるデータから分析する(データをわざわざ作らない)
  • データ分析するツールが無い(ツールを購入するほどでもない)

という、小規模企業、中規模企業の方向けの記事です。

専門家になろうという方は、別の記事をご覧くださいね。

データ分析とは?

そもそもデータ分析とは何ぞや、というと、私なりの定義では「データから意味のある情報を導き出すための手法」ということだと考えています。

現代ではありとあらゆる情報がデータ化されていて、膨大なデータから意味のある情報を導き出すためには、専門的な技術が必要になってきます。

(いわゆるビッグデータ、というヤツです)

ただ、中小企業においては、そこまで取り扱うデータが大量ではないので、分析に専門的な知識が必要ないことが多いです。

むしろ現場での肌感覚の方が重要で、データ分析は「肌感覚の補助」という位置づけでも問題ないと思います。

とはいえ、データ分析はやらなくても問題ない、ということではなくて、やはりデータの裏付けがあった方が的外れな仕事をしなくて良くなりますので、最低限のデータ分析の知識は身に着けておきましょう。

昨年、「ファクトフルネス」という本が流行りましたが、人間は思い違いをする生き物なので、ちゃんとデータから事実を明らかにしておく必要があります。

私の経験では、「製品Aの注文量が一番多いので、(製品Aが一番儲かると思って)製品Aの生産を優先させて製品Bは後回しにする」ということをしている会社さんがありましたが、製品原価を調べてみたら製品Bの方が3倍ぐらい儲かっていた、ということがありました。

また、人間どうしても好き嫌いがありますので、自分と気の合うお客さんにサービスばっかりをしてしまい、実際はあまり好きではないお客さんの方が、自分の店に貢献している、ということも良くあります。

大企業では、きちんと値決めのルールが決まっているのでこういうことは起こりにくいですが、小さな企業になってくるほど、こういったことが起こりがちなのです。

難しくなくて良いので、基本的なデータ分析を身につけておきましょう。

余談ですが「分析」の「析」という字を調べてみたら、「おのづくり」という漢字の部首で、文字通り斧に関係する文字でした。断、斬などと同じで、刃物で切るイメージです。データ分析も、データを分けて切り刻む・・・というと、ちょっとしっくりきません。英語のanalysisの語源は、紐を解くということらしく、データを紐解いてきれいにするイメージで、英語の方がしっくりきます。本当に余談です。

データ分析の目的

仕事でデータ分析をするので、「売上を上げよう」「利益を増やそう」「コストを下げよう」等々の目的があると思います。

売上を上げたければ、「どの商品の売上が伸びているのか」ということを調べるためにデータ分析を行うと思います。

利益を増やそうということであれば、利益率の高い商品を探したり、逆に利益率の低い商品を探して、どうやったら原価率を下げれるかを知るためにデータ分析を行うと思います。

目的を明確にして、それに見合った分析をしていきましょう。

仮説の立案と検証

それぞれの目的で、それに見合った分析をしていけば良いのですが、その際に自分なりの仮説を立てておいた方が良いです。

中小企業ですと、全く現場から離れてデータ分析だけをしている、という方はほとんど居ません。

現場で仕事をしながら感じていること、現場感覚、肌感覚で「こうじゃないかな」と思っていることがあるはずです。

自分が考えていることが正しいかどうかの検証に絞り込めば、データ分析にそんなに時間をかけなくて済みます。

また、検証ができれば、自信が確信に変わって、迷いなく仕事に打ち込むことができます。

現場で働いていることを生かしたデータ分析をしていきましょうね。

実際に分析をしてみましょう

ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、実際に分析をしてみて、基礎的なデータ分析の手法を身につけていきましょう。

今回は教材として、オリンピック前でもありますし、オリンピックにちなんだデータにしました。

ご参考までに、前回のオリンピックの分析記事はこちら

あなたが、仮にアフリカのどこかの国のスポーツ担当大臣になったとします。

黒人は陸上競技が強いということで、陸上競技の花形である「100m走」か「マラソン」か、どちらの競技を強化するかを決めることができる権限があるとします。

さて、どちらの競技を強化しますか?

まずはデータをダウンロードしてください

過去のオリンピックの100mの結果と、マラソンの結果をCSVデータにしました。

まずはこちらをダウンロードしてください。

(ネットから拾ってきたデータですので、値が正しいかどうかは保証しませんのであしからず)

国別のメダル獲得数を比較する

データ分析をするのに必要なのは、まず「区分ごとに集計する」ことです。

区分ごとに集計するためには、エクセルで便利な機能があって、「ピボットテーブル」という機能を使います。

ピボットテーブルの使い方については、こちらの動画をご覧ください

ピボットテーブルを使って、100m走の国別のメダル数を集計しましょう。

集計したら、メダル獲得数の多い順に並べ替えをしてみましょう。

並べ替えについては、こちらの動画をご覧ください

並べ替えをして、円グラフを作ってみましょう。

円グラフについては、こちらの動画をご覧ください

だいぶ端折りましたが、下のようなものが出来上がったはずです。

とりあえずグラフの見た目はあまり気にしなくて良いです

こうして出来上がった表とグラフを見ると、「アメリカが圧倒的に多い」ということが分かります。

同様に、マラソンもピボットテーブルで集計して、並べ替えをして、グラフ化してみましょう。

すると、下のような図ができます。

通常、円グラフを作るときは、下位は「その他」でまとめます

こうして並べてみると、マラソンの方はどこかの国にメダルが集中している、ということはありません。適当にバラけています。

じゃあどうして、メダルの国別の獲得数に違いがあるのか、というのは、また別の問題として考えないといけないのですが、とりあえずあなたがアフリカの小国のスポーツ大臣だったとしたら、100m走よりはマラソンを強化した方が、メダル獲得の可能性は高そうです。

ということで、簡単なデータ分析の基本は、

  • 区分ごとに集計する
  • 集計したデータをグラフ化する
  • データを比較する

の3つです。

パレート分析(ABC分析)

せっかくですので、データ分析手法の一つ、「パレート分析(ABC分析)」も押さえておきましょう。

調べていただくと分かると思いますが、世の中にはたくさんの分析手法があります.

その中でも、中小企業の担当者レベルではパレート分析が一番使い勝手が良いというか、よく使うことになると思います。

パレート分析とは?

パレート分析は、「パレートの法則」に基づいた分析です。

パレートの法則、というと難しく聞こえますが、「80対20の法則」「2対8の法則」というのは聞いたことがあるかもしれません。それと同じことです。

経験則として、「大体2割のもので、8割の結果を生み出している」という現象が起こっている、というのがパレートの法則です。

  • 2割の働きアリが8割の食料をとってきている
  • 2割の商品で、8割の売上をあげている
  • 2割の取引先で、8割の売上をあげている
  • 2割の営業マンが、8割の新規取引先を獲得してきている
  • 2割の不良原因で、8割の不良が発生している

等々、ざっくりとこういう現象が起こることが多い、ということです。

パレート分析は、「何が2割にあたるのか?」を調べるための分析方法です。

なぜ中小企業にパレート分析がお勧めなのか?

パレート分析は、「上位の2割の要素」を調べるための分析です。

大企業でもそうですが、特に中小企業は持っている資源(時間、人)が限られています。

たくさんの課題がある中で、上位の2割に絞った対策をすることで、限られた資源を有効活用することができるようになります。

いわゆる「選択と集中」を行うための分析ツールが、パレート分析です。

例えば、たくさんの不良原因があって、全ての不良原因を調べることは時間的に難しい場合、まずは上位2割の不良原因をつぶすことで、8割の不良を抑える、という時に活用します。

「効果が大きいところから手をつける」ために、効果が大きいところの絞り込みを行うのです。

パレート分析を実際にやってみましょう

では、実際にパレート分析を行ってみましょう。

データは、私が顧客管理ツールを作ったエステサロンのデータを使ってみます。

パレート分析の手順

パレート分析の手順は、下記の通りです。

  1. 区分ごと(商品ごと、顧客ごと等)に集計する
  2. 集計した値を、大きい順に並べ替える
  3. 全体に占める構成比を計算する
  4. 構成比の累計を計算する
  5. 累計で約8割の部分で線引きをする
  6. グラフにする

⑤の「累計で約8割のところで線引き」については、データによって感覚で決めてもらっても大丈夫です。

パレートの比率2対8というのは、だいたいの経験則なので、データによっては3対7になっていることもありますし、1対9になっていることもあります。

ただ、1対9ぐらいになっていると、特定の商品や特定の取引先への依存度が高い、その商品やその顧客がダメになったら会社全体が傾く、ということになるので、ちょっと気を付けた方が良いです。

手順を説明するのは大変なので、動画にしてみました。

ということで、パレート分析は知っておいて損はないので、モノにしていただいたらと思います。

まとめ

データ分析は、専門家が行うものだと思っていらっしゃった方もいるかもしれませんが、簡単なデータ分析はエクセルで充分にできます。

  • 目的に沿って
  • 仮説をたてて
  • 集計して比較してグラフ化する

方法で、データ分析を行ってみてくださいね。