起業支援の連載をするにあたり

こんにちは、ひとり社長システムズを運営している、株式会社デスクワークラボの吉井良平と申します。

このたび、ホームページの名称を会社名のデスクワークラボから、「ひとり社長システムズ」に変更しました。

名称を変更するにあたって、「ひとり社長向けのシステムが役に立つのはどんな方かな」と考えたところ、起業したてでまだ事業が軌道に乗っていない方だと思い、私なりの起業支援(応援)記事を書いていくことにしました。

私自身も、2016年に創業して9年、いろんな失敗を重ねてきて、「今だったらこんなことは絶対しないな」と思うことは多々あります。

飛びぬけて起業を成功させているわけではありませんが、曲がりなりにも独立して9年、起業当初は「このままやっていけるのだろうか」という不安にかられていましたが、これだけ失敗をしながらも、少なくとも生活の心配はしなくても大丈夫なぐらいにはなっています。

商工会議所のIT関連の相談員の経験もあり、これまでに多くの起業に関する悩みにも対応してきましたので、成功する人、失敗する人も大体分かります。

起業を考えられている、または、起業したてで不安がいっぱい、という方に向けて、ひとり社長の先輩として、なにがしかの参考になることを書いていきたいと思いますので、読んでいただけると幸いです。

起業にいたった経緯

まずは、私自身がどんな失敗をしてきたか、を紹介していきたいと思います。

私は新卒でスポーツ用品のメーカーに就職し、19年間そこでサラリーマンをやっていました。

今思うと、とても良い会社で大きな不満も無かったのですが、40歳になった頃に何かで「40歳定年制」という考え方があることを知って、なるほどな、と思ったのが一つのきっかけです。

スポーツ用品は、需要の6~7割が小中高生の部活需要で成り立っています。

退職する前は営業でしたが、少子化の影響をモロに肌で感じていました。

昔は「この学校はこのスポーツ店、この学校はこのスポーツ店」と、ある種の縄張りがあって、暗黙の了解でお互いの領域を守っていた部分がありましたが、需要が減っていくとそうも言ってられなくなってお互いの競争が激しくなってきます。

スポーツ店同士の争いに巻き込まれたりで、かなりモチベーションが下がっていたこともあり、「伸びる業界にいないと、この先の人生がもったいないな」と思っていたところもありました。

そんな時に、とある大学のバレー部の先生から「うちの学生で、○○(前職の会社)に就職したいという子がいるから、話を聞いてくれないか」と言われて、仕事のついででもあるので、快く話を聞きに行きました。

大学の食堂で話を聞いたのですが、その大学生が「自分はスポーツをずっとやってきたので、スポーツに関わる仕事がしたい」ということを切々と語ってきたのです。

話を聞きながら「自分にはもうこんな情熱は無いな・・・」ということを嫌というほど感じて、「環境を変えて何か新しいことをやらないとな」と、帰りの車を運転しながら考えていました。

その話を聞いてちょうど1週間後ぐらいに、高校時代の友人がイタリア料理のお店をやっていて、昼食を食べに行ったところ、「体力的にしんどいので、一回店をたたもうと思う」という話になりました。「流行っていた店だったのにもったいない・・・」と思いながら、「こんなに流行っているのにやめるんだ、よし、これも何かのきっかけだ、自分もすっぱりやめよう!」と、割と衝動的に会社をやめることを決断しました。

決心してからの行動は割と早く、上司にその旨を伝えて、会社に不満があるわけではないので、引継ぎもきちんとして、円満に退職しました。

これがまず一つの失敗で、よく考えずに会社を辞めています。性格なので仕方がないところもありますが、皆さんは次の準備をしてから退職しましょうね。

退職してから

「何か新しいことをやろう」という理由なので、特に何かやりたいこともなく、何がやりたいかを考えると、「これまでずっと仕事をしてきたので、まずはゆっくりしよう。子育てもきちんとしていなかったから、子どもに向き合ってみよう。大学の時に、もう少し勉強もしたかったな。」ということで、半年間は何もせず、図書館に通ったり、子どもの習い事の送り迎えをしたり、大学院に行こうかと思ってちょっと勉強したり、とそんなことをしていました。

大学院の先生に相談すると、あまりお勧めしないということだったので、半年ぐらいしてから「じゃあどこかで働くか」と、リクルートのような就職エージェントに登録してみたところ、びっくりするぐらい問い合わせが無かったのです。

自分のサラリーマンとしての能力にはそれなりに自信があったのですが、ほとんど問い合わせが無く、たまに書類に通って面接に行っても、なんだか変な人を見るような目で見られている感覚がして、「これは再就職は難しくて、自分で何かするしかないな・・・」と思うようになりました。

有名な会社をなぜか退職して、40歳を過ぎてプー太郎をしている人の評価は限りなく低い、という現実を思い知らされた感じです。

とはいえ、特にやりたいことがあるわけでもなく、どうやって起業しようかと思っていたら、「ブログ起業」というものがあることを知ります。

「好きなもの、趣味、得意なことをブログに書いていくことで、ファンが出来て仕事につながる」ということで、文章を書くのは好きなので、これだったら出来るんじゃないかと思って、ブログ起業をしてみることにしてみました。

起業してから

よく分からないなりに、失業手当が無くなった2015年4月に開業届を出しました。

「好きなもの、趣味」というと、僕は歴史が好きなので、まずは歴史に関するブログを書くことにしました。

自分自身の興味として、「日本は負けると分かっていたはずなのに、なんで太平洋戦争を起こしたのか」と疑問に思っていたこともあり、近代史のディープな部分に関することを書くことにしました。

今から思うと、そんなもの仕事になるわけがないのですが(今みたいに、YouTubeでゆっくり霊夢等のプラットフォームがあればなんとかなったかもしれませんが)、半年間ブログを書いてみて、全く収入になる気配がしなかったため、何か別のことをする必要が出てきます。

これが失敗の二つ目で、ちゃんとお金になるかどうか考えていないのです。本当、我ながらひどいです。

幸か不幸か、会社員時代に、「貯金をするより、株を買って世の中にお金を回した方が良い」と株を結構買っていて、アベノミクスのおかげでその株が2~3倍に上がっていたので、まだお金はあったのですが、お金がなくなっては株を売ることを繰り返していました。

じゃあ他に書くネタがあるかな・・・と考えていくと、僕はエクセルが得意で、会社員時代は社員研修の講師もしていたり、いろいろシステムも作ったよな、と思い出して、エクセルに関するブログに切り替えていきました。

今でも、このホームページ内にエクセルに関する記事が結構あるのは、その頃の名残です。

その頃はエクセルに関するブログが少なかったこともあり、アクセスは順調に増えて、半年ぐらいで1日あたり5000人ぐらいが見てくれるブログになりました。

その頃は、ブログを見た人で問い合わせがあった人向けに、オンラインでエクセル研修をしようと思っていましたが、1日5000人に見られていても、月に1~2回問い合わせがあるだけです。あとはGoogle広告の収入が月に数千円、ということで、これも生活を成り立たせることにはなりません。

マクロを使ったエクセルのシステム依頼はいくつかありましたが、その頃は相場も分からず、今だったら10万円ぐらいは貰わないと、というシステムを、相手の言い値で1万円で請けていたり、と、これもひどいです。

全くの新しい業種で起業する際は、本当に事前に学習が必要です。

これじゃまずいな、と思い、地元の商工会連合会が主催していた「創業塾」に参加してみることにしました。

その頃は、「自分で考えたら、儲からないことばかりになる。とりあえず人のアドバイスは全部聞こう」と思っていて、「まずは地元の商工会議所に登録してみては」とアドバイスされ、地元の商工会議所に登録したのが、2016年の9月です。ここまでで1年半かかっています。

あとは、「在庫管理とか困っている人が多いよ」という話をそこで聞いて、前職で在庫管理の仕事も6年ぐらいやっていて割と得意なので、ブログに在庫管理に関する記事を書いていくと、在庫管理に関する仕事がポツポツと入るようになってきました。

売れるサービスを持つことも、とても重要です。

とはいえ、2016年の確定申告は、売上27万円で提出して、あとちょっとで株も無くなるし、どうしようかな・・・という感じでした。(結局は創業塾で紹介のあった、政策金融公庫でお金を借りて、数年しのいだ形です)

ITコーディネータ取得

商工会議所に登録をすると、まだ青年部に入れる年齢だったため、青年部に誘われました。

「どうせ3年で卒業しないといけないんだし・・・」と最初は乗り気ではなかったのですが、とりあえず勧められたことは全部やろうと思っていたので、とりあえず青年部に入りました。

青年部はいろんな行事があって、行事に参加していると地元の小規模事業者の友人も増えるので、これまで大きな会社の感覚しか分からなかったのが、ここで小さな会社のことが分かったのは、今となっては大きな経験でした。

青年部の行事で、市役所の産業振興課に行くことがあり、ここで市の産業振興課の仕事を請け負っていた「ITコーディネータ」という資格を持っていた方と知り合いになりました。(ざっくり言うと、中小企業にITを導入する際のコンサルタントの資格です)

「吉井さんもITコーディネータを取って、一緒にやろう」と誘ってくれたこともあり、2018年にITコーディネータを取得して、自治体や商工会議所の専門家派遣の仕事が入ってくることになり、ようやく何とか生活ができる目途が立ってきました。

やはり人と知り合って、ネットワークを生かすことが大事です。

コロナバブル

ようやく人並みの生活ができるようになってきたころ、コロナ禍がやってきました。

コロナで苦労された方もたくさんいらっしゃると思いますが、テレワークをしたことが無い会社が大半だったこと、行政もコロナ禍での産業支援の予算がかなりあったことから、医療関係には全く及びませんが、私の仕事にはプチバブルがありました。

それまでお金が無かったのに、お金が回るようになったので、「やはり地元で仕事をしている限りは、雇用を作りたい」ということで、法人化もして、事務所も借りて、従業員を雇ってみました。

事務所を借りて、従業員も雇って・・・とすると、固定費が増えて、本当、何のために仕事をしているのか、分からなくなります。

コロナ禍の間はそれでも回っていたのですが、コロナが終わると、テレワークなどどこ吹く風・・・ということで、私のバブルも終焉を迎えます。

従業員さんも、頑張ってはくれたのですが、所詮は吉井良平という個人のスキルでやっている会社で仕組み化ができていないので、給料分の仕事をしてもらうのは難しかったです。

結局は、苦労して頑張ったものの、会社の借金が増えただけ、という結果に終わったという感じです。

この辺りも、失敗の例として、また後で紹介していきたいと思います。

今は仕切り直しで、自分一人になりました。

自分のやりたいことは大体やってきて、それに伴う失敗も大体終わった(はず)なので、ひとり社長の先輩として、今までの経験を伝えていくためにも、ホームページ名を「ひとり社長システムズ」にしたというところもあります。

起業に失敗はつきもの

こうして振り返ってみると、失敗だらけの起業だったと思います。(長くなるので書いていないですが、小さな失敗は他にもいっぱいあります)

とはいえ、起業に失敗はつきものです。逆に、失敗してからが勝負だと思います。

そうは言いながら、しなくて良い失敗はしなくても良い、失敗するにしても、大きく転ぶのではなく、小さく転んだ方が良いですよね。

私のこれまでの失敗してきた経験、商工会議所等の専門家相談で今まで見てきて失敗の例などを踏まえて、読んでいただいた方の参考にしていただければと思います。

参考にした本

この連載をするにあたって、いくつか本を読んでみました。

全く同じことを書くことは無いと思いますが、同じような内容のことは多分書きますので、こちらで紹介をさせていただきます。

読んで、考え、書き記す 起業「成功」ノート(吉田雅紀著、すばる舎リンケージ)

この本は、起業したころに読んでいて、8年ぶりぐらいに読んでみたところ、「その通り!」とうなずくことばかりです。

とはいえ、起業したての頃は文字を読んで理解できても、実感がないので、全く分かってなかったな、と思います。

起業して、3年後ぐらいに読み返しておけばよかったな、と思います。

スモールビジネスを目指している人、スモールビジネスを始めたけどあまりうまくいっていない方にお勧めな本です。

起業を考えたら必ず読む本(井上達也著、明日香出版社)

この本は、どちらかというと、起業して会社を大きくしたい方向けの本です。

起業を考えている人向けに、起業の現実を教えてくれています。

私も、起業する前に読んでおけばよかった・・・と思いました。本当。

おわりに

割とネガティブなことばかり書きましたが、起業して自分自身の思う通りにできる、この自由は何物にも代えがたいです。

これからいろいろ書いていきますが、結局のところはは自分次第です。良いものにも悪いものにもできます。

起業が皆さんにとって良いことになるよう、私なりに精一杯、お伝えしていきますので、よろしくお願いいたします。

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