起業の心構え:雨ニモマケズ

前回も書きましたが、起業にあたっては、ノウハウよりもまずは心構え・マインドがとても大事です。

今回は、日本人ならほとんどの人が知っているだろう、有名な詩を読みながら、起業の心構えについて、私なりの想いを伝えていこうと思います。

詩というものは面白いもので、読む人によって、読む時期によってとらえ方が違ってきます。私も書きながら、今の自分はこうやってとらえているんだな、と興味深いものがありました。

雨ニモマケズ(全文)

宮沢賢治の有名な詩です。

文章は、青空文庫から転載しています。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

起業する、起業した方へ、私の読み方

少しずつ読みながら、私なりの感想を書いていきます。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ

起業をしたら、サラリーマンではないので、決まった休みはありません。

豪雨の時でも、台風の時でも、仕事をする気構えが必要です。

もちろん余裕ができたら休めば良いですし、余裕がないと良い仕事ができないというのも真実なので、適度に休めば良いのですが、雨でも風でも雪でも猛暑でも、歩みを止めずに仕事をする心構えは必要です。(365歩のマーチをBGMに鳴らしてください)

豪雨や台風や雪で世の中が止まっていても、お客さんが来ない日にしかできない仕事もあります。

アリとキリギリスの話のように、正しい努力をしていれば、アリのように勤勉な方が勝つに決まっているのです。勤勉が一番大事です。

また、サラリーマンの場合は、誰かが病気になったら他の人がその分をカバーしてくれますが、ひとりで起業した場合、自分の代わりに頑張ってくれる人はいません。

「無事これ名馬」という言葉がありますが、健康第一、丈夫であることも、ビジネスの成功にはとても大事です。

幸い、起業してひとり社長になると、サラリーマンの頃のように上司がいるわけではないので、精神的にはストレスが無く健康になる人の方が多いです。

お金がないというのは結構なストレスになりますので、その意味でも儲からない商売を始めることは、いくら意義のある仕事であっても、あまりお勧めしません。

いくら雨でも風でも雪でも・・・と書いていても、身の危険が生じる場合は、それはその時の対応をしてくださいね。当たり前ですけど。

慾ハナク

欲は無く・・・というのは、起業の心構えとしては全然ダメです。

「裕福になりたい」「気楽に働きたい」「社会に役立ちたい」「異性にもてたい」等々、何でも良いので、自分の欲を自覚してください。

起業にあたって、「事業計画を作りなさい」という人もいますが、私はそんなに勧めてはいません。起業したての頃に作っても、自分のビジネスがどうなるか不確定要素が多いので、絵に描いた餅になることが多いからです。

(絵に描いた餅でも、それなりに作る意義はあるとは思います)

事業計画まで作らなくても良いと思いますが、その代わりに「自分の欲」こそがビジネスの羅針盤になるので、自分の欲を自覚しておきましょう。

起業をすると苦しい時もあるかもしれません。おそらくあるでしょう。

その時に自分の欲こそが、頑張る原動力になります。

決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル

起業すると、一番の商品は「あなた自身」です。

いつも不機嫌な顔をしている人には仕事は頼みたくないもので、いつでも微笑んでいるぐらいがちょうど良いと思います。

が、「決して怒らず」というのは、起業家としては向いていないと思います。

ビジネスというのは弱肉強食の面があり、一人で仕事を始めたての新米社長は圧倒的弱者です。はっきり言って、最初はなめられています。

いつも怒っていてはだめですが、たまには怒る必要もあるのです。

仕事をしていても、口うるさい人の仕事を優先的にしてしまうことってありますよね。

手持ちのお金が少ない時や忙しい時に、「この会社は厳しいから先に支払っておいて、ここはちょっと待っててもらおう」ということにならないように、なめられないようにたまには怒りましょう。

仕事の厳しさも当然必要です。

一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ

起業してお金がたくさん儲かっている方は、贅沢をしても良いと思います。

お金は天下の回りものなので、お金を持っている人がお金を使うことで、経済が回っていきますので。

起業当初は金銭的な不安も大きいので、そんな時は粗食で耐える必要があります。

景気の波もあったり、いきなりコロナのようなことがあったり、地震や洪水のような不測の事態が起こって、急に売上が無くなったりすることもあります。

贅沢をするかどうかは人生観によるところがあるので、その人なりで良いと思いますが、大事なのはきちんとお金を管理することです。

月の売上と費用をきちんと管理して、「これぐらいは使って良い」という範囲内でお金を使いましょう。

起業当初は、予想外の出費も多いものです。

決して何も考えずにお金を使うことは、してはいけません。(これは自戒も込めて、ですが)

アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ

この部分は、利他の精神を説いていると思いますが、余裕がないと人に優しくすることはできません。

自分の仕事がうまくいっていないと、人のことまで構っていられなくなります。

人に優しくするためにも、まずは自分の仕事で稼げるように頑張りましょう。

起業、特に田舎で起業をすると、当然のように地元とのつながりが出来てきます。

祭りの手伝いとか、イベントの協賛とか、そんなことやってられるか・・・と思う時もありますが、こういう手伝いをしているときに人脈が出来て、思わぬ仕事につながったりすることもあります。まずは、こういった無償労働で人間性を見てから、という面もあったりします。

情けは人の為ならず、ということで自分に返ってくることもありますが、まずは自分自身が稼げるようになることが大事だと私は思います。

自分に余裕ができてきたら、自然と人にも優しくなれるものです。

ヨクミキキシワカリ

お客さんと話をしていると、「なぜ自分に頼んでくれたのか?」「なぜこの商品を注文したのか?」ということが分かります。

相手の話をよく聞いて、相手のニーズを理解して、それに応えるようにしていきましょう。

机上の空論ではなく、自分の頭の中で考えているだけではなく、実際に現場を見て、現場主義でいきましょうね。

新しい販促方法を思いついたり、他にも需要がありそうなところが分かったり、お客様の話をよく聞くことで、新しい発見もあり、それが商売を継続できるタネになっていきます。

ソシテワスレズ

「忘れない」というのは当たり前のことですが、なかなか実施することは難しいです。

忙しい時にメモをしていなくて、「あれ、どうだったっけ・・・」となることが、(私には)度々あります。

また、自分がお願いしたことを全然対応してくれいなくて問い合わせたら、「すみません、忘れてました」という場合もあります。

相手と会話をしていて、「この話、前回したはずなんだけどな・・・」と思うことも頻繁にあります。私自身も、「それ、前回、話しましたよね?」と問い返されることも、たまにあります。

お願いされたことや、会話の内容を覚えていることは、「あなたのことを大事に思っていますよ」というメッセージです。

「依頼を受けて、忘れずに、きちんと対応する」当たり前のことですが、この当たり前のことの積み重ねで仕事が回っていくのです。

同業他社が忘れたりしてチョンボをしたりすると、その仕事が自分のところに回ってくることもあります。

お客さんと家族のことを話をした際にきちんと覚えておくと、「息子さん、小学校卒業されたんですよね」とか会話の糸口にもなって、コミュニケーション力の向上にもつながります。

「ソシテワスレズ」

とても大事です。

ちなみに、嫌なことを忘れてなかったことにしまう、精神衛生上の高等技術?もあります。

野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ

起業してバラ色の展望がある時は、きれいなオフィスを借りて、周りの人に誇りたい気分もあると思います。お店もお金をかけてお洒落にして、ホームページも立派なものを作って・・・とやりたい気持ちも分かります。

もちろんスタートダッシュは大事なので、その市場のことを熟知しているのであれば、それで良いと思います。

自分のビジネスに不安がある人は、最初の投資は抑えておくことをお勧めします。

実際に仕事を始めて、お客さんとたくさん接してみて、相手の話を良く見聞きして理解して、初めて自分のビジネスの良さが分かることが多いです。

自分が思っていたことと、実際にお客さんが評価してくれることが違うことも多々あります。

その時にキャッシュが無くて、方向転換ができないようになってしまうと、結果的にビジネスの立ち上がりが悪くなってしまいます。

「林の陰の小さな茅葺きの小屋」というのは、現代で考えると「裏通りの雑居ビル」というイメージです。

家賃等の固定費は、結構負担になりますし、不動産は解約に時間がかかったりします。リース契約も、使ってないのにお金だけ払うことになってしまうこともあります。

出来るだけ固定費がかからないように考えて起業しましょう。

東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ

前にも書きましたが、自分に余裕がないと、人には優しくできません。

人に優しくするためにも、自分のビジネスを頑張って、早く儲かるようにしていきましょう。

儲かってきたら、ロータリークラブとかライオンズクラブのような慈善団体に入れば良いのです。

ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ

仕事をしていると景気の波は当然あります。突然、コロナ禍のように商売が止まってしまうこともあります。地震や豪雨災害もあります。

そんな時に、涙を流すのはまぁ良いかもしれませんが、オロオロ歩いていてはダメです。

不況の時こそ、今までの仕事のやり方を見直したり、新しい商売にチャレンジしたり、何かする気概が必要です。

起業して、いつも順風満帆に行くことは、まずありません。

苦しい時こそ人の真価が問われます。すべては経営者の心持ち次第、というところもあります。

実際に、コロナ禍で業績を向上させた会社もたくさんあります。

不況に負けずに、前を向いて進む心構えを持ちましょう。

ミンナニデクノボートヨバレ

周りの人にもてはやされる必要はありませんが、デクノボーと呼ばれるのは、あまり良くありません。(あまり言われたい人もいないと思いますが)

一度レッテルを貼られると、なかなかそこから評判を回復するのは難しいのが人の世です。

ホメラレモセズ
クニモサレズ

仕事をしていると、周りに褒められたいと思うのは当然のことだと思いますが、褒められることを目的とすると、仕事がおかしくなってきます。

よくテレビに取り上げられるお店があったりしますが、実際のところそれで儲かっているのかは別問題なのです。

SNSで盛った投稿をする必要がある時もあると思いますが、「能ある鷹は爪を隠す」という言葉もあるように、地味でも堅実に儲けている会社もたくさんあります。

あくまで自分のやるべきことをやっていって、そのうえでお客さんに褒めてもらって業績が上がる、という考え方の方が良いと思います。

「苦にされる」みんなから邪魔者扱いされるのはみんな嫌だと思いますし、実際に仕事に良い影響もありません。

サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

事業計画書を最初から書く必要はないが、「こういう人になりたい」「こういう会社にしたい」という欲は必要、と最初の方に書きました。

自分の欲求、欲望こそが、起業してからの羅針盤になります。

今から起業しようと思っている方、突然起業することになってしまった方等々、それぞれに事情が違うと思いますが、ぜひ自分の想いを自覚していただきたいと思います。

次回からは、少し実践的なことも書いていく予定です。

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